胃食道逆流症(GERD)/逆流性食道炎

胃食道逆流症(GERD)/逆流性食道炎とは

　胃食道逆流症(Gastroesophageal Reflex Disease:GERD)は、主に胃の中の酸が食道へ逆流することで、胸焼けや呑酸（酸っぱいものがこみ上げる感覚）などの不快ね症状を引き起こしたり、食道粘膜がただれる病気です。胸が詰まるような痛みを感じることがあるほか、喉の違和感や慢性的な咳が続く患者さんもいます。特に、胃酸の逆流は食後２～3時間以内に起こることが多く、食後にこれらの症状を感じた場合は胃酸の逆流が原因の可能性を考える必要があります。

胃食道逆流症のタイプ

胃食道逆流症には以下の３つのタイプがあります。

１，非びらん性逆流症（NERD）：食道炎（食道粘膜のただれ）がなく、自覚症状のみがあるタイプ。
２，逆流性食道炎：食道炎があり、自覚症状もあるタイプ。
３，無症候性逆流性食道炎：自覚症状はないが、食道炎のみがあるタイプ。
　このうち、②と③のタイプを総称して逆流性食道炎と呼びます。

胃食道逆流症の影響は？

胃食道逆流症は命にかかわる病気ではありませんが、日常生活の質（QOL)に大きな影響を与えるため、適切な対処が必要です。食生活の見直し（食べ過ぎ・高脂肪食の摂取・就寝前の食事の回避・減量など）や、適切な薬の服用によって多くの患者様の症状が改善し、生活の質が向上します。近年、食生活の欧米化やピロリ菌感染の低下により、胃食道逆流症の患者さんが増加していると考えられています。

胃食道逆流症の原因

　胃では、胃酸が分泌され食物の消化を助けています。胃の粘膜は胃酸から守られていますが、食道は防御機能が弱く、胃酸が逆流すると容易に粘膜が傷ついていしまいます。長時間にわたる胃酸の逆流により、食道粘膜がただれ逆流性食道炎となります。
　通常、胃と食道のつなぎ目（下部食道括約筋）が胃酸の逆流を防いでいますが、食道裂孔ヘルニアがある場合などは逆流防止の働きが弱まり、胃酸が逆流しやすくなります。また、健康な人でも食後には一時的に胃酸が逆流することもがありますが、通常は食道の蠕動運動によって速やかに胃に戻されます。しかし、胃食道逆流症の患者さんではこの蠕動運動が弱まり、胃酸が食道内に留まってしまうことがあります。
　なお、胸焼けや呑酸などの逆流症状は、胃酸の逆流だけでなく、空気や酸度の弱い胃液の逆流によっても生じることがあります。特に非びらん性逆流症の患者さんでは、食道の近くが過敏になり、少しの逆流でも強い症状を感じることがあります。

診断方法

診断には主に以下の方法が用いられます。
１，自覚症状の確認：胸焼け、呑酸などの症状の有無をチェックします。
２，胃カメラ検査（上部内視鏡検査）：食道粘膜にただれ（逆流性食道炎）が認められるかを確認します。
３，記入式問診表（Fスケール）：自覚症状をより正確に評価するために活用されます。
逆流性食道炎がない場合でも、自覚症状があれば胃食道逆流症と診断されます。また、逆流性食道炎の有無にかかわらず、症状が続く場合は食道運動障害や知覚過敏、好酸球性食道炎などの可能性があるため、詳しい検査が必要なこともあります。
胃カメラ検査は必須ではありませんが、食道がんや潰瘍などの他の病気ではないことを確認するためにも、なるべく検査を受けることが望ましいです。

日常生活での注意点

胃の内容物の逆流を防ぐため、以下の点に注意しましょう。

生活習慣で避けるべきこと

食事で避けるべきこと

特に肥満の解消（体重減少）や上半身をやや起こして寝る（頭部挙上）ことは、症状の改善に効果的です。

薬物療法

治療には胃酸の分泌を抑える薬が有効です。

１，プロトポンプ阻害薬（PPI）：胃酸の分泌を抑えます。
２，カリウムイオン競合型アシッドブロッカー（P-CAB)：PPIより強力に胃酸分泌を抑える薬。
３，制酸薬・アルギン酸塩：胃酸を中和し、酸による刺激を弱めます。
４，消化管運動改善薬・漢方薬：胃の運動を促進し、胃酸の逆流を防ぎます。
初期治療としてPPIまたはP-CABを４～８週間服用し、多くの患者様で症状の改善が期待できます。症状の改善しない場合は、薬の増量や種類の変更、消化管運動改善薬の併用などを行います。

維持療法の重要性

• 症状の軽い場合は、生活習慣の改善だけで薬が不要なこともあります。
• 症状が強かったり、食道炎が重度の場合は、食道狭窄・バレット食道・食道腺がんのリスクがあるため、維持療法が推奨されます。
• 軽度の食道炎でも、薬を中止すると症状が再発する場合は維持療法を検討します。

胃食道逆流症は適切な治療で改善できる病気です。気になる症状があれば、お早めにご相談下さい。