胃・十二指腸潰瘍とは
胃や十二指腸の壁が、胃酸や消化酵素によって傷つき、深い傷(潰瘍)ができる病気です。胃の粘膜が剥がれ、穴が空きそうな状態になることを指します。

主な原因はヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染です。近年では、解熱鎮痛剤(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs)の影響で起こる薬剤性潰瘍も増えています。また、薬剤やピロリ菌とは関係なく発生する特発性潰瘍も増加傾向にあります。
ピロリ菌に感染すると、胃や十二指腸の粘膜が炎症を起こし、粘膜を保護する粘液が減ることで酸によるダメージを受けやすくなり、潰瘍ができます。NSAIDsも同様に、粘膜を傷つけたり、保護する力を弱めたりする作用があるため、潰瘍ができやすくなります。
胃・十二指腸潰瘍の症状
- みぞおちや上腹部の鈍い痛み
- 吐き気や嘔吐
- 十二指腸潰瘍では夜間に痛みが出ることもある。
- 出血を伴う場合、黒い便(タール便)や吐血
- 長期間の出血で貧血になることもある。
胃・十二指腸潰瘍の患者数と放置した場合のリスク
2017年の厚生労働省の調査によると、日本の患者数は、
・胃潰瘍;約2万人
・十二指腸潰瘍;約3,300人
過去と比較すると、胃潰瘍は1984年の約5分の1、十二指腸潰瘍は約10分の1に減少しています。これは、ピロリ菌感染者の減少や、ピロリ菌除菌治療の普及によるものです。
しかし、高齢化に伴い、NSAIDsを服用する人が増えたため、薬剤性潰瘍の割合が高まっています。また、特発性潰瘍も約1割を占めるようになっています。
放置すると、出血による貧血、潰瘍の穿孔(穴が開く)、腹膜炎などを引き起こし、手術が必要になることもあります。
胃・十二指腸潰瘍の原因
主な原因は以下の通りです。
- ピロリ菌感染(胃粘膜の炎症や粘液の分泌低下)
- NSAIDs(痛み止め)(粘膜保護成分の抑制)
- 喫煙・ストレス(直接の原因ではないが、ピロリ菌感染者では影響あり)
- 胃酸分泌の増加(十二指腸潰瘍の主因)
検査方法と診断
- 胃カメラ検査(内視鏡検査)で直接確認
- ピロリ菌検査(感染の有無チェック)
治療方法
基本的な治療は、薬の服用です。
- 胃酸の分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬:PPI)
- 胃粘膜を保護する薬
通常、6~8週間で治癒しますが
- 暴飲暴食は避ける
- 喫煙・アルコールは控える
- ストレスを溜めないといった生活習慣の改善も大切です。
ピロリ菌感染がある場合は、除菌治療が推奨されます。除菌に成功すると、潰瘍の再発が防げるほか、胃がんの予防にもつながります。
また、NSAIDsやアスピリンを服用している場合は、ご相談下さい。
潰瘍の合併症と緊急処置
- 穿孔(胃や十二指腸に穴が開く)→手術がひつようなこともあります。
- 吐血・大量出血→内視鏡での止血処置が必要
これらの合併症は命に関わることがあるため、早期診断・治療が重要です。