大阪市平野区の内科・消化器内科・内視鏡内科・アレルギー科
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過敏性腸症候群(IBS)

 過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome) は、腸に器質的異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部膨満感、便秘や下痢 などの便通異常が慢性的に続く疾患である。ストレスによる腸蠕動の異常や、痛みを感じやすい知覚過敏が特徴である。
 有病率は一般人口の10〜15%と推定され、特に若年成人や女性に多い。ストレス、睡眠障害、精神疾患(不安・うつ) などが発症リスクを高めるとされ、夜勤・交代制勤務者での発生率も高いと報告されている。

診断にはRome IV基準が用いられる。

  • 最近3か月の間に週1日以上の腹痛があり、以下の2つ以上を満たす
    1. 排便に関連する
    2. 排便頻度の変化を伴う
    3. 便の形状が変化する

また、症状が診断の6か月以上前から続いている必要がある。

便の形状(Bristolスケール)による分類

  1. 便秘型(IBS-C) … 硬便が主体
  2. 下痢型(IBS-D) … 軟便・水様便が主体
  3. 混合型(IBS-M) … 硬便と軟便が交互に出現
  4. 分類不能型(IBS-U) … 上記に当てはまらない

診断には、器質的疾患(大腸がん、炎症性腸疾患、感染症など)の除外が重要であり、血液検査や大腸内視鏡検査が必要となる場合もある。

IBSの原因は明確ではないが、脳と腸の相互作用異常(脳腸相関の異常) が関与していると考えられる。

  1. ストレス自律神経の異常 により腸の運動が過剰または低下
  2. 腸の知覚過敏 → 健常者よりも軽い刺激で痛みを感じやすい
  3. 腸内細菌の変化 → 感染性腸炎後にIBSを発症するケースがある
  4. 食事の影響 → 高脂肪食や特定の炭水化物(FODMAP)が症状を悪化

1. 生活習慣の改善(第一選択)

  • 規則正しい食事(暴飲暴食を避ける)
  • ストレス管理(リラックス法、適度な運動)
  • 睡眠の確保

特に、FODMAP(発酵しやすい炭水化物)を避ける食事療法が注目されている。

2. 薬物療法

症状に応じて以下を使用。

  • 消化管運動調節薬(腸の運動を整える)
  • プロバイオティクス(ビフィズス菌・乳酸菌など)
  • 下痢型:セロトニン3受容体拮抗薬、止痢薬
  • 便秘型:腸の水分調整薬、下剤
  • 腹痛:抗コリン薬、抗うつ薬(低用量で使用)

3. 心理療法

ストレスが関与するため、以下の療法が有効な場合がある。

  • ストレスマネジメント
  • 認知行動療法(CBT)
  • マインドフルネス療法
  • 催眠療法

 加齢に伴い症状は軽快する傾向がある。便通異常のタイプが変化することもあり、長期的には自然寛解するケースも多い。
ただし、機能性ディスペプシアや胃食道逆流症(GERD) を合併することがあるため注意が必要です。

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